2017-11-21 ■ お題「好きな短歌」 藤村詩集 (新潮文庫 し 2-15) 「初恋」まだあげ初(そ)めし前髪(まへがみ)の林檎(りんご)のもとに見えしとき前にさしたる花櫛(はなぐし)の花ある君と思ひけりやさしく白き手をのべて林檎をわれにあたへしは薄紅(うすくれなゐ)の秋の実(み)に人こひ初(そ)めしはじめなりわがこゝろなきためいきのその髪の毛にかゝるときたのしき恋の盃(さかづき)を君が情(なさけ)に酌(く)みしかな林檎畑の樹(こ)の下におのづからなる細道(ほそみち)は誰(た)が踏みそめしかたみぞと問ひたまふこそこひしけれ 島崎 藤村『若菜集』