お題「思い出の味」

 普通「思い出の味」と言うと、「美味しくて忘れられない味」とほぼ同じ意味で使うものだろう。

 しかし、不味くて、もしくは思い出すのがつらくて忘れられない「思い出の味」というのもあるのだ。

 蒟蒻芋をふかして、皮をむいて、突き固めて団子状にした蒟蒻玉というものがある。

これにいくつかの工程を加えたものが蒟蒻になるのだが、その工程の中には、「あく抜き」も含まれる。

 幼児の頃、その蒟蒻玉があまりに美味しそうに見えたので、思わず食べてしまった。

 ところが、それは一言で言うと「灰汁」の塊だった。大声で泣き叫び助けを求めた。砂糖をスプーンで何杯もなめさせられた記憶があるが、それではとても間に合わず、しばらく泣き叫んだ記憶がまだ残っている。